はじめに|「投稿してるのに売れない」の正体
キッチンカー仲間や飲食店の方から、いちばんよく聞かれる相談がこれです。
「Instagramは毎日のように投稿してるんですよ。でも、それが売上につながってる気がしないんです」
正直にお伝えすると、僕も同じ場所で何年もつまずいていました。
飛笑朗(ぴえろ)はたこ焼き屋として2014年に創業し、2018年からキッチンカーで出店を続けて、いまで12年・キッチンカー歴8年になります。岐阜県を拠点に東海3県のイベントを回るスタイルで、Instagramは@piero.gifuで運用しています。
その間、看板メニューのひとつとして育ててきたのが「極たこ焼」です。通常のたこ焼きより一回り大きく、具材と焼き方にこだわった、いわゆる「高単価商品」。
今日この記事で書くのは、その極たこ焼がInstagram経由で「指名買い」されるようになるまでの、3つの転換点です。きれいなマーケティング理論ではなく、現場で焦げを出しながら掴んだ実体験として、同業のキッチンカーや小さな飲食店の方に向けてまとめます。
第1章|「映える写真」をやめた日
きれいに撮れているのに、止まらない指
最初の数年、僕は完全に勘違いしていました。
「Instagramは映え。だから、いい写真を撮れば売れる」
実際、照明にもこだわって、撮影角度も研究して、それなりに「きれいな写真」を撮れるようになりました。でも、いいねは増えても、現場で「Instagramを見て来ました」と言ってくれる人はほとんどいなかったんです。
ある日、自分のフィードを他人の目で見直して、ようやく気づきました。
「これ、たこ焼き屋の写真として、どこにでもあるな」
きれいに撮れているのは事実。でも、「ぴえろの極たこ焼」である必然性がどこにもなかった。写真の上手さと、買う理由は、まったく別物だったわけです。
きっかけは、ある常連さんの一言
切り替えのきっかけは、いつもイベントに来てくれる常連の方の何気ない一言でした。
「ぴえろさんのインスタ、写真は綺麗なんやけど、どれが一番美味しいんか分からんのよね」
ガツンと来ました。撮ることに夢中で、「見た人がどう判断するか」を完全に置き去りにしていたんです。映え写真の裏側で、僕は「自分が満足する写真」を撮っていただけだった。
切り替えたのは「情報量」だった
そこで方針を変えました。映え写真をやめたわけではなく、1枚の中に「情報」を入れるようにしたんです。
具体的には、こんな順番で撮るようになりました。
- まず極たこ焼の断面を撮る(普通のたこ焼きとの違いが一目でわかる)
- 次に焼いている最中の鉄板を撮る(ライブ感、職人感)
- 最後にお客さんが手に持っている瞬間を撮る(サイズ感、リアル)
この3点セットを意識するようになってから、保存数が明らかに伸び始めました。「映え」ではなく「比較できる」「想像できる」という写真に変えた瞬間、極たこ焼が「ちょっと特別なたこ焼き」として認識されるようになっていきました。
同業者へのひとこと
きれいな写真は、もう全員が撮れる時代です。差がつくのは、「これを見ただけで、商品の説明ができてしまう写真」のほうです。映え写真の枚数を減らしてでも、情報量のある1枚を入れる。これだけで、フィードの空気が変わります。
第2章|キャプションを「説明」から「物語」に変えた
商品説明だけ書いていた頃の限界
写真を変えても、まだ何かが足りませんでした。
そこで次に手を入れたのが、キャプションです。それまでは、こんな書き方をしていました。
「本日も◯◯イベントに出店中です!極たこ焼600円。ぜひお越しください」
事実は正しい。営業情報としても必要。でも、これだけでは「読み続ける理由」がないんですよね。スーパーのチラシと同じ構造です。
1投稿に「ひとつの物語」を入れる
そこから、キャプションは「説明+物語」の二段構えにしました。
たとえば、極たこ焼の投稿なら、こんな順番です。
- 掴みの一文:「実は、極たこ焼のタコは普通のより1.5倍大きいの、知ってましたか?」
- 背景の物語:なぜそのサイズにしたのか、最初に試したときの失敗、お客さんの反応
- 商品情報:価格、出店情報、注意点
- 行動喚起:「次の出店は◯◯です」
ポイントは、1投稿につき「伝えたい物語はひとつだけ」に絞ること。あれもこれも書くと、結局なにも残りません。
Before / After:実際のキャプション例
文字だけだと伝わりにくいので、具体的に並べてみます。
【Before】
「本日も◯◯マルシェに出店中です!極たこ焼600円です。15時頃まで営業予定。ぜひお越しください!」
【After】
「『極たこ焼のタコ、本当に1.5倍あるんですか?』 先週のイベントでお子さんに聞かれて、ハッとしました。当たり前だと思ってたサイズの違い、ちゃんと伝わってなかったんやな、と。極たこ焼を作り始めたのは、通常サイズで物足りなさを感じてたお客さんに『もう一段、満足してもらえるたこ焼きを』と思ったのがきっかけです。生地の量も、タコのサイズも、焼き時間も、全部ゼロから組み直しました。600円というお値段は、たこ焼きとしては正直、攻めた価格設定です。でも、食べたあとに『これは納得』と言ってもらえる一個を目指してます。本日◯◯マルシェにて15時まで。お子さんにも『1.5倍』のサイズ感、ぜひ体感してください」
長さは確かに増えてますが、読み終わったあとに『食べてみたい』と思わせる構造になっているのが伝わるでしょうか。
このスタイルに変えてから、コメントの質が明らかに変わりました。
それまでは「美味しそう!」だけだったのが、
- 「タコの大きさ、写真でも伝わります」
- 「次の出店、子どもと行きます」
- 「うちの近くにも来てください」
という、会話になるコメントが増えてきたんです。
そして、ここが一番大事なところなんですが、キッチンカーで「Instagramの投稿、見ました」と声をかけられる回数が、目に見えて増えました。物語を読んだ人は、現場でその物語を確認しに来てくれるんですね。
同業者へのひとこと
商品情報だけのキャプションは、「お知らせ」であって「コンテンツ」ではありません。1投稿につき、ひとつだけでいいので、「あなたしか書けない背景」を入れてみてください。文字数は気にしなくて大丈夫です。読みたい人は最後まで読みます。
第3章|ハッシュタグを「集客」から「認知」に切り替えた
大きいタグを追いかけて空振りした話
ハッシュタグの設計でも、僕はいったん遠回りしました。
最初は王道で、#たこ焼き #キッチンカー #グルメ みたいな大きなタグを並べていたんです。投稿数100万件以上のタグです。
結果は、ほぼゼロ。当然なんですが、流れが速すぎて、自分の投稿は数秒で埋もれます。
中小タグ+地域タグに振り切る
そこから、ハッシュタグの設計をこう変えました。
- 大タグ(100万超):1〜2個まで
- 中タグ(1〜10万):5〜7個(メイン戦場)
- 小タグ(1万以下):3〜5個(地域・ジャンル特化)
- ブランドタグ:必ず1個(#飛笑朗 #ぴえろ など)
特に効果が大きかったのが、地域タグの粒度を細かくしたことです。「#岐阜グルメ」だけでなく、出店するイベント名や、その地域で使われている地元タグを入れる。これで「その地域の人」のフィードに届きやすくなり、現場での「インスタ見ました」率が上がりました。
実際のハッシュタグセット例
参考までに、極たこ焼の投稿で僕が使っている構成を、考え方ごとに分けて紹介します(タグ名は時期によって入れ替えています)。
- 大タグ枠(1〜2個):#たこ焼き #キッチンカー
- 中タグ枠(5〜7個):#岐阜グルメ #東海グルメ #キッチンカーグルメ #たこ焼き好き #名古屋グルメ など
- 小・地域タグ枠(3〜5個):出店地域名+ジャンル、出店イベント名のタグ
- ブランドタグ(必須):#飛笑朗 #ぴえろ #極たこ焼
ポイントは、「出店日ごとに地域タグを差し替える」こと。固定セットでルーティンにせず、その日の現場に合わせてカスタマイズします。手間ですが、現場での反応がまったく違ってきます。
ここで自分の中で整理がついたのが、ハッシュタグは「拡散」の道具ではなく「認知」の道具だということです。
不特定多数に届けようとすると失敗します。狙うべきは、
- その日のイベントに来る可能性のある人
- キッチンカーやたこ焼きに関心がある層
- 岐阜・愛知・三重で食べ歩きしてる人
この3層に確実に届けるための住所書きだと思って設計したほうが、結果的にうまくいきました。
同業者へのひとこと
ハッシュタグは「数」より「精度」です。30個埋めるより、刺さる15個のほうが現場の反応は良くなります。出店地域ごとにハッシュタグセットをいくつか用意しておくと、運用も楽になります。
第4章|現場とSNSを「往復」させる仕組み
投稿を見た人を、現場で取り逃がさない
ここが、僕が一番伝えたいところかもしれません。
Instagramで極たこ焼に興味を持ってくれた人が来店してくれたとき、現場で何も仕掛けがないと、その関係はそこで終わってしまうんですよね。
そこで、現場でも次の3つを必ずやるようにしました。
- キッチンカーに「@piero.gifu フォローしてね」のPOPを設置
- 注文時に「Instagram見てくれてありがとうございます」と一言添える
- その日の出店風景をストーリーズに上げて、来てくれた人がリポストしやすくする
特に3つ目は地味に効きます。来てくれた人が自分のストーリーズで紹介してくれる。それを僕が再シェアする。この往復が、新しいフォロワーを連れてきてくれます。
POPの工夫:「フォローしてね」だけでは弱い
ちなみに、車両のPOPも何度か作り直しました。最初は単純に「Instagramフォローしてね」だけ書いていたんですが、これだと「なぜフォローするのか」の理由がないんですよね。
今のPOPには、こう書いています。
「次の出店場所は @piero.gifu で先行告知中。会いに来てくれる方、お待ちしてます」
「フォローしてね」ではなく、「フォローするとこんないいことがある」を一文で添える。これだけで、QRコード読み込み率が体感で上がりました。
DMが来るようになって気づいたこと
運用を続けていると、DMで質問をくれる方も増えてきます。
- 「次の出店、◯◯にも来ますか?」
- 「予約はできますか?」
- 「同じくキッチンカーをやっていて、お話を聞きたいです」
僕はDMにはなるべく早く、丁寧に返すようにしています。コメント欄は「公の会話」、DMは「個別の関係づくり」だと捉えていて、後者で繋がった方は、現場でも長くお付き合いが続くことが多いです。
ここでも一貫しているのは、「画面の向こうに、ちゃんと人がいる」という当たり前の感覚を忘れないこと。当たり前なんですが、毎日投稿してると、つい忘れそうになります。
整理すると、こういうループが回り始めました。
- 極たこ焼の投稿で興味を持ってもらう
- 出店情報の投稿で現場に来てもらう
- 現場で体験してもらう
- お客さんがストーリーズで紹介してくれる
- それを見た人がまた興味を持つ
このループが回り出すと、広告費ゼロでも、じわじわフォロワーと売上が積み上がっていきます。Instagram単体ではなく、「現場と往復させる前提で運用する」というのが、僕がたどり着いた答えでした。
同業者へのひとこと
SNS運用を「画面の中の作業」だと思っていると、必ず疲れます。現場とSNSは、お互いの素材源なんです。投稿のための現場、現場のための投稿、と捉えると、両方が続けやすくなります。
第5章|数字で振り返る、極たこ焼の変化
具体的な数字までは公開できない部分もありますが、ざっくりした変化はこんな感じです。
- 「Instagramを見て来ました」と言ってくれる方の比率:体感で大幅増加
- イベント出店時の極たこ焼の指名注文:以前は「とりあえず通常」が多かったが、最初から「極で」と言う方が増加
- リピーターの距離:近隣だけでなく、東海3県の遠方からの方も来てくれるように
ここで言いたいのは、Instagramが「売る場所」ではなく、「来る前にファンになってもらう場所」だということです。極たこ焼のような少し高単価の商品ほど、事前の関係づくりが効いてきます。
「続ける」のがいちばん難しい、という本音
ここまでノウハウっぽく書いてきましたが、最後に正直なことも書いておきます。
Instagram運用で、いちばん難しいのは「続けること」です。
イベント出店の前後はバタバタで、移動して、仕込みして、焼いて、片付けして、帰宅したら深夜。そこから投稿の編集をして、キャプションを書いて、ハッシュタグを選んで……正直、しんどい日もあります。
僕も、何度も止まりかけました。
それでも続けてこれたのは、「現場で『インスタ見ました』と言ってもらえる瞬間」が、何よりのご褒美だからです。あの一言が、次の投稿のエネルギーになる。同業の方なら、この感覚、分かってもらえる気がします。
完璧な運用を目指さなくていいんです。止まらないことのほうが、上手いことより100倍大事です。
長くなったので、最後にまとめます。
僕が試行錯誤の中で掴んだ、キッチンカー・小さな飲食店のInstagram運用の3つの軸は次の通りです。
- 写真は「映え」より「情報量」:1枚で商品を説明できる写真を入れる
- キャプションは「説明」より「物語」:1投稿に1つの背景を必ず添える
- 運用は「画面」より「往復」:現場とSNSを行き来させる前提で組む
そして、なにより大事なのは、完璧を目指して止まるより、自分の言葉で続けることです。僕も今もまだ模索中ですし、来年にはまた違う運用をしているかもしれません。
それでも、目の前のお客さんに、自分の商品をきちんと届けたいという気持ちさえあれば、Instagramは必ず味方になってくれます。
キッチンカー出店情報・最新の極たこ焼
最新の出店スケジュールや、極たこ焼の焼きたて投稿は、Instagramでお届けしています。
東海3県でキッチンカーを見かけたら、ぜひ「Instagramで見ました」と声をかけてください。それだけで、こちらのテンションが3割増しになります。
▶︎ Instagram:@piero.gifu
▶︎ 出店エリア:岐阜県を中心に東海3県
同業の方からのDM相談も歓迎です。お互い、現場で踏ん張りましょう。
*飛笑朗(ぴえろ)|たこ焼き屋歴12年・キッチンカー歴8年。岐阜県を拠点に、東海3県のイベントへ1.5トントラックの車両で出店中。調理師免許所持。*
