キッチンカーの車両を用意して、営業許可を取って、メニューの値段も決めた。いよいよ出店……というところで、多くの方がこう悩みます。
「看板って何を作ればいいの?」
「タペストリーってそんなに重要?」
「ポップは手書きでいいの?」
結論から言うと、キッチンカーの外観は「遠く=車体と看板」「中間=タペストリー」「目の前=ポップ」の3段階で作るのが正解です。同じ商品を同じ値段で売っていても、この見せ方ができているかどうかで売上が全然変わってきます。
この記事では、たこ焼き屋歴12年・キッチンカー歴8年の僕が、実際の出店経験をもとに看板・タペストリー・ポップの作り方と見せ方を解説します。売れるポップの書き方、雨や風への対策、夜間出店の照明まで、この記事だけで外観づくりの全体像がつかめるようにまとめました。
なお、キッチンカー開業までの全体の流れは「キッチンカーの始め方まとめ」で順番に解説していますので、これから始める方はそちらも合わせてどうぞ。
① 商材選びの大切さ
② キッチンカーを購入する際の注意点
③ 営業許可書の取り方
④ 販売商品の値段の決め方
⑤ 店舗外観の重要性(この記事)
キッチンカーの看板・タペストリー・ポップが売上を左右する理由

キッチンカーの店舗外観はとても重要です。
通常の固定店舗は近隣住民の方をメインターゲットに営業していくので、商品の味や店員の接客態度がリピートの決め手になります。しかし、キッチンカーの場合は少し違います。
キッチンカーは毎回「初めてのお客様」が相手

キッチンカーでイベントなどに出店する場合、メインターゲットのお客様はイベントに参加している方です。毎月さまざまなイベントが開催されていますが、イベントによって参加するお客様の年齢、性別、職業は全く違います。
音楽イベントと地域のお祭りとスポーツ大会では、集まる人も、財布のひもの緩み方も、歩くスピードもまるで別物です。客層が毎回違うということは、イベントをメインに出店するキッチンカーは、毎回初めてのお客様を相手に営業するということ。味を知ってもらう前に、まず「この店で買ってみよう」と思ってもらわなければ、勝負のスタートラインにすら立てません。
他のキッチンカーよりも集客する必要がある

大きなイベントになるとキッチンカーが30台以上並ぶことも珍しくありません。通常のイベントでも10台~20台のキッチンカーが並んで営業します。
ある程度名前が売れているキッチンカーであれば、お店の名前だけで行列ができます。しかし、名前が売れていないうちは、どれだけその場でお客様の購買意欲を上げられるかが勝負になります。
イベントに来たお客様は、どのキッチンカーから購入するかを自由に選べます。「自分のキッチンカーは、他のキッチンカーよりも集客できるか?」——これを常に考えることが大事です。
外観づくりの基本|「距離」で役割を分ける3点セット
では、具体的に何をどう作ればいいのか。僕がおすすめしているのは、お客様との「距離」で販促物の役割を分ける考え方です。
お客様は一瞬であなたの店の前に現れるわけではありません。「遠くから気づく → 近づきながら何の店か理解する → 目の前で買うものを決める」という3つの段階を踏んでいます。それぞれの距離で見えるもの・読めるものが違うので、役割を分けて作るのが効率的です。
遠距離|車体・大きな看板・のぼりで「気づいてもらう」
数十メートル離れた場所から目に入るのは、車体の色、屋根上や側面の大きな看板、のぼり旗です。ここでの役割はただひとつ、「あそこに何か店がある」と気づいてもらうこと。この距離では細かい文字は読めないので、目立つ配色と、大きな文字の商材名(「たこ焼き」「クレープ」など)だけで十分です。おしゃれなロゴよりも、遠くから読める大きなひらがな・カタカナのほうが仕事をします。
中距離|タペストリーで「何の店か伝える」
10メートル前後まで近づいたお客様に、「たこ焼きの店なんだ」「なんだかおいしそう」と伝えるのがタペストリーの役割です。商品写真と店名で世界観を伝え、店の方向へ足を向けてもらいます。ここが弱いと、気づいてはもらえても素通りされます。
近距離|ポップ・メニュー表で「買うものを決めてもらう」
店の前まで来てくれたお客様に、メニュー・値段・おすすめを伝えて、注文を後押しするのがポップです。ここで「どれがいくらか分からない」と迷わせてしまうと、せっかく足を止めてくれたお客様がスッと離れていきます。
この3つは、どれか一つ欠けても集客が細ります。遠くで気づかれなければそもそも来ない。何の店か伝わらなければ素通りされる。値段が分からなければ買われない。逆に言えば、3点セットがそろえば、名前の売れていないキッチンカーでも足を止めてもらえるということです。
タペストリーの作り方|店の雰囲気は一枚で決まる

キッチンカーの看板で一番使われるのがタペストリー
キッチンカーで看板を作るときに一番使用されるのがタペストリーです。理由はシンプルで、安価で制作することができ、持ち運びもしやすく、使いやすいから。布やターポリンといった素材なので丸めて車に積めますし、車体の側面に掛けるだけで店の「顔」が完成します。
そして、タペストリーの作り方ひとつで店舗の雰囲気そのものを変えることができます。同じ車、同じ商品でも、掛かっている一枚が違うだけで「入りやすい店」にも「よく分からない店」にもなる。それくらい影響の大きいアイテムです。
デザインは自作する?外注する?
基本的には自分でデザインを考えて制作しますが、デザインにはやはりセンスが必要です。苦手な方はデザインを外注するのもひとつの手です。
外注する場合は、自分のキッチンカーのイメージをしっかりと伝えて、イメージに合ったタペストリーを作ってもらってください。丸投げすると「きれいだけど、自分の店っぽくないもの」が上がってきがちです。参考にしたい他店の写真、使いたい色、必ず入れたい文言(店名・商材名・キャッチコピー)をセットで渡すと失敗しにくくなります。
最近はネット印刷でタペストリーが数千円台から作れます。開業初期の限られた予算でも手が届く販促物なので、まずは一枚、メイン商材がドンと伝わるものを作りましょう。
タペストリー・メニュー表・チラシの印刷
キッチンカーの集客に欠かせないタペストリーやメニュー表・チラシをネット印刷で手軽に作成。
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写真はプロのカメラマンに撮ってもらう
タペストリーなどに使う商品写真は、プロのカメラマンに撮ってもらうことをおすすめします。多少費用がかかっても、使用する写真で売り上げが全然変わってきます。
お客様は文字より先に写真を見ます。湯気の立ち方、ソースの照り、生地の質感——いわゆる「シズル感」は、スマホでパッと撮った写真とプロが撮った写真とでは歴然の差が出ます。タペストリーは一度作れば何年も使い続けるものなので、写真への投資はもっとも回収しやすい部類だと考えてください。
風と雨への対策も忘れずに
屋外営業のタペストリーは、必ず風にあおられます。上側だけ留めてバタバタとはためいていると、絵柄は読めませんし、見た目にも落ち着きのない店になってしまいます。四隅のハトメを結束バンドやロープでしっかり固定し、下端も留めておくのが基本です。
また、雨の日の出店を考えると、紙ベースではなく耐水性のあるターポリン生地で作っておくと安心です。濡れてもサッと拭けばよく、色あせにも強いので長持ちします。
看板の作り方|A型看板・ブラックボードの使い分け

手書きと印刷、どっちがいい?
看板づくりには「手書き」と「印刷(データ入稿)」の2通りがあります。それぞれ良さが違います。
手書きの良さ:親しみ・温かみが出る、その場で書き換えられる、費用がほぼかからない。
印刷の良さ:プロらしさと清潔感が出る、遠くからの視認性が高い、雨風に強く長持ちする。
使い分けの目安は、店名やメイン商材といった「変わらない情報」は印刷で、日替わりメニューや「残りわずか」といった「変わる情報」は手書きで、です。全部手書きだと素人感が強くなり、全部印刷だと融通が利かなくなる。両方を組み合わせるのが現実的です。
A型看板・ブラックボードは「車から離して」置ける
タペストリーは車体に取り付けるものですが、A型看板やブラックボードの最大の強みは車から離れた場所に置けることです。
お客様の通り道(導線)の上に置いて、「この先にたこ焼き屋があります」という案内や矢印を出せば、車が目立ちにくい位置に配置されたときでも店まで誘導できます。ブラックボードならチョークやマーカーで、その日のおすすめ・限定メニュー・残り数をすぐ書き換えられるので、1台あると出店のたびに活躍してくれます。
夜の出店は「照明」が看板になる
夜のイベントでは、どれだけ良い看板を作っても暗ければ存在ごと消えます。逆に、明るい店には人が自然と吸い寄せられます。夜間営業では照明そのものが看板だと考えてください。
LEDのスポットライトでタペストリーとメニュー表を照らす、電球色(オレンジがかった温かい光)でおいしそうな雰囲気を出す、といった工夫で夜の見え方は大きく変わります。白すぎる光は食べ物が冷たく見えるので要注意。発電機やポータブル電源の容量には、調理機器だけでなく照明の分も見込んでおきましょう。
売れるポップの作り方【実践編】
ここからは、読者の方から特に質問の多いポップの作り方を詳しく解説します。ポップは紙とペンがあれば今日から作れる、一番安くて即効性のある販促物です。
ポップに必ず入れる3つの要素
タペストリーで店舗の雰囲気を作ったら、ポップや看板で細かな商品説明や値段を伝えます。ポップに入れる要素は、次の3つに絞ってください。
- 商品名——読みやすく、大きく。凝った名前より伝わる名前
- 値段——ポップの中で一番大きくてもいいくらい
- ひとことのおいしさ表現——「外はカリッ、中はとろっ」など五感に訴える短い一言
あれもこれも書きたくなりますが、歩いているお客様がひとつのポップを見てくれる時間はほんの数秒です。こだわりの製法も産地の話も、注文カウンターでの会話やSNSに回して、ポップは3要素に絞る。これが「読まれるポップ」の大原則です。
値段は大きく書く|理由は「聞けないから」
ポップで一番やってしまいがちな失敗が、値段が小さい・そもそも書いていないことです。
お客様の立場になると分かりますが、値段の分からない店で「これ、いくらですか?」と聞くのは意外と勇気が要ります。聞いてしまって高かったら断りにくい。だったら、最初から値段がはっきり書いてある隣の店で買おう——お客様はそう動きます。
ちなみに、その値段自体をどう決めるかは前回の記事で詳しく解説しています。→ キッチンカーで販売する商品の値段の決め方
手書きポップをきれいに見せるコツ
「字が下手だから手書きは無理」という方も多いですが、手書きポップは字のうまさよりも次のポイントで見違えます。
- 太いペンを使う——細いペンの文字は屋外では読めません
- 色は黒+赤の2色まで——色数を増やすほど素人っぽくなります。赤は値段や「おすすめ」だけに使う
- 文字数を減らして、1文字を大きく——書く内容を半分にして、文字サイズを2倍に
- 鉛筆で薄く下書きしてからなぞる——バランスの失敗がなくなります
- 白か黄色の紙に濃い色の文字——屋外で一番読みやすい組み合わせです
それでも苦手なら、文字部分だけパソコンで大きく印刷して、飾りだけ手書きにする「半分手書き」でも十分温かみは出ます。
ラミネート加工で雨・油・風に強くする
紙のポップをそのまま屋外に出すと、湿気で波打ち、油はねで汚れ、風でちぎれて、1日でヨレヨレになります。そこでおすすめなのがラミネート加工です。
ラミネートしておけば、雨の日も拭くだけできれいになり、同じポップを次の出店でも使い回せます。100円ショップの手貼りタイプでも代用できますが、何枚も作るならラミネーターが1台あると、仕上がりも作業スピードも段違いです。ポップのほかに、メニュー表や掲示物の保護にも使えます。
💡 ポップづくりの相棒「ラミネーター」
家庭用の手頃なモデルで十分使えます。A3対応サイズを選んでおくと、メニュー表の保護までカバーできて便利です。
ラミネーター以外にキッチンカー営業であると便利な道具は「キッチンカーの必須道具10選」でまとめています。
やりがちなNGポップ・NGデザイン例
最後に、イベント会場でよく見かける「もったいないポップ」の例です。
- 文字を詰め込みすぎて、結局何も伝わらない
- 色を使いすぎてチカチカする(全体で3色までが目安)
- 凝った商品名だけが書いてあって、何の食べ物か分からない
- 値段が書いていない、または小さすぎて読めない
- 車体・タペストリーとポップの雰囲気がバラバラで、ちぐはぐな印象になっている
共通しているのは、「お店側が書きたいこと」が優先されて、「お客様が知りたいこと」が後回しになっていることです。何の店か・いくらか・おいしそうか。この3つが数秒で伝わるかどうかを基準に、自分のポップをチェックしてみてください。
統一感のある店舗イメージづくり
イベント主催者に「呼びたい」と思われる外観
店舗のイメージづくりが重要な理由は、お客様のためだけではありません。イベント主催者には開催するイベントのイメージがあり、その雰囲気を壊してしまうようなキッチンカーは、出店募集があっても選ばれません。
「このキッチンカーをイベントに呼びたい!」と思ってもらえる店舗のイメージづくりができると、どのイベントにも出店できるようになります。つまり外観は、お客様への販促であると同時に、イベント主催者への営業ツールでもあるのです。
メイン商材を明確にして「専門店」に見せる
キッチンカーは、自分のメイン商材をしっかり打ち出すことで専門性が出て、集客につながります。
「何でもいいから売れればいい」と、イベントによって毎回違うメニューで出店していると、専門性が出せず、何の店か分からない中途半端なキッチンカーになってしまいます。看板もタペストリーも毎回作り直しになり、費用面でも損です。メイン商材を中心に店舗づくりをしていくことで、長く続けていけるキッチンカーになります。
イメージカラーとテーマを決める
看板やポップは、店舗のイメージと一体感が出るように作るのがコツです。イメージカラーやテーマを決めると、統一感が出やすくなります。
車体・タペストリー・看板・ポップ・スタッフの服装、そしてSNSの投稿画像まで同じ色とテーマでそろえると、「あの赤いたこ焼き屋さん」のようにお客様の記憶に残りやすくなります。この世界観づくりは集客全体に効いてくるので、詳しくは「キッチンカーのマーケティング戦略」も読んでみてください。
また、統一した外観はそのままInstagramの投稿素材になります。出店先で撮った外観写真がそのまま宣伝になるので、SNSでの見せ方は「キッチンカーのInstagram集客」で解説しています。
出店当日の設置テクニック
毎回出店場所も出店位置も違うのがキッチンカーの特徴です。せっかく作った看板やタペストリーも、置き方ひとつで効果が変わります。出店した際にタペストリーの向きや角度を少し見やすくするだけで、集客率が変わってきます。
場所に合わせて向きと角度を調整する
出店した場所でのキッチンカーの向きや角度によって、お客様からの「見え方」が変わります。会場の配置によってお客様の導線は毎回違うので、しっかり考えてキッチンカーの向き、タペストリーや看板の向きを調整しましょう。
僕は1.5トントラックで出店していますが、車体が大きくても、置き方しだいで見え方は良くも悪くもなります。設営が終わったら一度お客様側に回り込んで、自分の店がどの方向からどう見えているかを自分の目で確認する習慣をつけるのがおすすめです。
お客様の導線と目線を観察する
看板の向きや角度も出店場所に合わせて変えていく意識を持つと、目にとまりやすくなり、足を止めてもらえる要因になります。
営業中は、お客様の目線を観察してみてください。お客様の目線を見ていると、どこを見て、どこを見ていないかが分かってきます。それが分かってくると、自然とお客様の目にとまるポップの見せ方ができるようになってきます。
開店直後の配置が一日中正解とは限りません。人の流れは時間帯で変わります。売れ行きが鈍いなと感じたら、A型看板の位置やタペストリーの角度を営業中でも動かしてみる。この小さな調整の積み重ねが、1日の売上の差になって表れます。
まとめ|外観は「一番安くできる売上対策」
販売する商材を一番アピールできるのが、お店の外観です。キッチンカーは毎回初めましてのお客様が多い商売だからこそ、外観づくりが売上に直結します。
- キッチンカーは毎回「初めてのお客様」が相手。外観が買うかどうかの判断基準になる
- 遠く=車体・看板、中間=タペストリー、目の前=ポップの3段階で役割を分けて作る
- タペストリーは安価で使いやすい。商品写真はプロに依頼する価値あり
- ポップは「商品名・値段・ひとこと」の3要素に絞り、値段は大きく書く
- ラミネート加工で雨・油・風に強くして使い回す
- イメージカラーとテーマで統一感を出す
- 出店ごとに向き・角度を調整し、お客様の目線を観察する
あなたのお店でお客様が足を止めてくれるよう、まずは商材のタペストリーから力を入れてみてください。それだけでも集客は変わってきます。
外観で足を止めてもらえるようになったら、次のステップは売上をさらに伸ばす導線づくりです。→ キッチンカーの売上の上げ方
A型看板・ブラックボードを購入する
この記事で紹介した、車から離して置ける看板類です。導線への誘導・日替わり情報の書き換えと、1台で何役もこなしてくれます。
A型看板・ブラックボード
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